Platanus’s Favourite

お気に入りだけ。「殿堂入り」BL作品の感想。
すべてネタバレ感想なので、ご注意ください。
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夜明けには優しいキスを

凪良 ゆう
白泉社
(2009-07-17)

 

まず。テーマが重いし、暗い。普段なら避けて通るタイプの話。
読み始めた直後は、やっちゃったかな、って思ったんだけど。やっぱり凪良さんの文章には引き込まれてしまう。
キャラクターがまた、奥行きがあるというか、凝ったつくりになっている。あとがきで裏設定やらその後の話なんかを紹介してるけど、本編を読んでいても、そういうキャラの背景を感じ取れるような書き方だった。
それとキャラの台詞に、ハッとさせられるようなものがあった。ちょっと新鮮だったり、感心させられたり、いい意味で予想を裏切るものがあった。それに共感できるかどうかは別の問題だけど、読んでて面白かった。
しっかりしているように見えて、抱えている事情が事情なだけに脆いところのある要と、ちょっと暑苦しいけど(…すみません)自分の生き方を貫いているところがカッコイイ公平。まさにお似合いというカップルだった。
主人公の要は過去の罪を常に気にして、自分を過酷な状況に追いやって苛めることで、贖罪しようとしている。はっきりいって私には感情移入しにくいタイプなのだが、不思議と抵抗を感じずに読めた。
別の作家の作品でこれと似たような設定の話をいくつか読んだことがあるけど、主人公の罪悪感や苦しみまでは伝わってくるのに、行動が的外れだったり浅慮だったりして「贖罪」という言葉にリアリティがなく、ピンと来なかった。リアリティのない設定の話であっても、主人公の心情はリアリティを出さなくちゃいけない部分だと思う…。
この作品の場合、要の行動や考え方に終始一貫したものを感じた。常に罪の意識がつきまとっている感じがして、考え方が理解しやすく、心情部分でリアリティを感じた。正しいとはいえない方向にいっているので共感はできないのだが、かえって人間臭さを感じ、感情移入できるし、応援したくなる。
同じような題材を扱っても、書き方次第でこんなに面白くなるんだなあと。
あ、…やや上から目線になってしまった。気をつけないと。

ストーリーは主人公の過去の罪と、DV男の今カレとの関係が軸になっていて、かなり重苦しいものだが、きっちり丁寧に書かれているところがいい。痛いは痛いんだけど、ドロドロしすぎていないというか、気分が悪くなるというよりは悲しくなってくるような痛さで、後味は悪くなってない。痛い分、公平の優しさが救いになるし、要が少しずつ強くなっていくところが感動的だった。
要の罪は、ボランティアで話相手をしていた高校生の少女に告白されて振ったら、その子が「捨てられました」という書置きを残して自殺したというもの。
どちらかといえば要は被害者という感じなのだが、まったく責任がないとは言い切れない部分もあり、結果が重大なだけに罪悪感を持つのも当然だと思った。この匙加減?のよさで主人公に同情しやすくなったし、話に納得がいったんだと思う。この過去が分かることで主人公を軽蔑してしまうようなこともないし、かといって「なんで君が悩んでるの?」ということにもならない。
何も悪くない主人公が「全部自分が悪いんです」というのは、BLにはわりと多いと思うんだけど、そういうのは理不尽でかわいそうというより、単に思考回路が理解できないまま終わっちゃう…。(…健気受が苦手な理由その3)
この自殺した少女の件も公平に背中を押される形で決着をつけに行き、少女の両親との和解まで含め、端折らず逃げずにひとつひとつ解決していくところが良かった。
この後、要は自殺を図った元カレ(…またしても主人公が不憫です)加瀬を救うために、公平と別れる。恋愛至上主義じゃないところがBLとしては珍しい展開。でも要にとって必要なことだと思えるので、えーって思いつつも納得の展開だった。
そして要の気持ちを理解し、尊重してくれる公平にジーンとなった。別れないって言い張らないところに、愛情の深さを感じた。
ここらで加瀬が潔く(都合よく?)身を引いてくれることを期待したのだが、そう簡単にはいかず、要は加瀬と恋人としてではなく、友人として同居を始める。要の献身でちょっとずつ加瀬の心がほぐれていき、救われていく過程が素晴らしかった。…なんだかだんだん加瀬のことが好きになってきちゃった。それで最後にとうとう勇気を出して要を手放す場面で、またしてもジーンときた。なんといってもやっと要が幸せになれるときが来たし、加瀬が立ち直ってくれたことも嬉しかった。加瀬にも幸せになってもらいたいなあ。(あとがきで彼の未来が保証されてよかった。スピンオフが読めないのは残念だけど)

ラストの静かな朝の情景がよかった。暖かな気持ちで読み終えた。

凪良ゆう | comments(0) | -

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