Platanus’s Favourite

お気に入りだけ。「殿堂入り」BL作品の感想。
すべてネタバレ感想なので、ご注意ください。
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月の欠片

私はかなり好きだけど、他人にとってはそれほどでもないかもしれない。人によっては物足りないと感じるだろうな、と思う。ものすごく感動するとか、読んで大満足!とかいうタイプの作品でもないし。

佐々木さんの作品は結構な冊数を読んだと思うけど、私はこれが1番好きかもしれない。
私の波長と合っているのかも。
佐々木作品で時々感じる癖の強さを感じなかった。ストレートに見せかけて変化球みたいな。バランスを取ろうとして、軸が傾いちゃてるような不自然さ、とでもいえばいいのか。
それがないから読みやすかったし、話の運び方や心理描写も丁寧でよかった。
…感覚的に好きな作品だから、なんだか抽象的にしか好きな理由を書けないんだけど。

静かで落ち着いた雰囲気だけど、同時に力強さも感じた。
帯に引用されている英俊の台詞が素敵。一途で切なくなるというか。
裕真が英俊のことを考えて、付き合うことを躊躇してしまう気持ちも分かるし、将来に対する不安も共感しやすかった。目覚める確率は低いのに、8年も待ち続けるほどの強い思いがなければ、裕真を支えることはできないかも。
英俊の執着は精神的に不安定なものを感じるから、そこは裕真がフォローできるといいな〜とか。
金環日食の記憶が新しいうちに読んだほうが楽しめそう。

佐々木禎子 | comments(0) | -

ブレイクアウト 美しい棘

佐々木 禎子
講談社
(2008-12-05)

「ドロップアウト」のスピンオフシリーズ。
続くらしい。


「ドロップアウト」の華勝の弟で、香港マフィア『新勝義』のトップになった華炎が主人公。華炎は女顔で長髪でブラコンでプライドが高く、しかもヒステリックかつサディスティックというキャラで、まあいわゆる「女王様受」ってやつか。うーーん、全然好みじゃないんだよなあと。買うかどうしようか迷っていたのだが、結局気になって買ってしまった。

面白かった。
さすが佐々木さんという読みやすさ。あとがきでも触れられていたが、今回は珍しくキャラも話濃く、話のスケールも大きいので、いつもより読み応えも増量という感じ。
BLによくある「女王様受」は、男なのに女王様って言われてもついていけないんだよねーと常々思っているが、華炎は意外とそういうタイプとは違っていて、そこらへんも読みやすかった。なんていうか、うーん。ヒステリックでサディスティックなのは変わらないし、内面にドロドロしたものを抱えているんだけど、中身は案外男らしいし、乾いていたというか。
別に本人はそれほど気にしてはいないんだけど、ものすごく孤独なキャラだった。本当にまわりに誰もいない。常にボディーガードを従えて歩いてるし、名前のある部下もちらっと出てくるけど、命令と報告以外の会話は出てこない。たまに会う情報屋のほうがよほど親しい気がするが、もちろんビジネスライクな関係だし。
手が届かないと思って諦めた兄の華勝との会話が一番親しく感じられたというぐらい、孤独。
満たされることを望んではいるけど、寂しいって描写は少なくて、読み終わってから「孤独な人だ」と改めて気付く感じ。自覚が足りない分、余計に切ない…。
その中で華炎が華勝以外に珍しく興味を持った相手がパクなのだが、これも裏切られたことがきっかけで。たぶん華炎以上に冷酷なパクが、華炎に跪いて愛を請い、気を引くために裏切り続けるというのも、二人の性格を見ていると理解しやすかった。「普通に愛される方法が分からない」という、ギリギリな関係が切なくもあり魅力的でもある。
普段は従順だけど最終的には裏切るというパクの態度の二面性も興味深い。受を騙して優位に立つ攻って構図は珍しくない気がするけど、パクの場合、裏切る相手である華炎を心底尊敬しているのも事実なので、単純には語れない。振り回すことを楽しんではいるけど、これしか相手に関わる方法を知らないから裏切っているという…。
今後二人の関係がどう変わっていくのか、続きが楽しみなシリーズになった。
佐々木禎子 | comments(0) | -

帝都に秘めた華の咲く

佐々木禎子
二見書房
(2007-12-14)

佐々木さんの遊郭ものということで、楽しみにしていた。好き嫌いが激しい私だが、遊郭は免疫があるし、少々抵抗のある題材でも佐々木さんなら大丈夫だろうという安心感があった。そういう点での佐々木さんへの信頼感は絶大なので、パール文庫を試すならこれしかないだろうと。
近くの書店に売っていなくて、3軒も回って空振りに終わり「発売日なのに…」と悔しいやら不思議になるやら。もしかして明日が発売日?とか不安になりつつ、絶対に今日中にゲットしてやると意地になって都会本屋に行ってみた。
…あるじゃないですか。あっさりと。
新刊平台中央手前に2列で積んであった。


男が花魁。これをどう料理してくれるかというのが関心点だった。その辺で引っかかると、作品世界に没頭できないもので。
なるほどねーというオリジナル設定だった。男が花魁、というのに引っかかる読者ほど、違和感なく読める設定にしてある。甘くもない世界だとさらっと書いてあるのもいい。華が足りないという印象もあったが、後からそれが活きてくる。
主人公の忍は遊郭に売られることになった晩に初恋の相手に抱いてくれと頼む。もちろん諦観からの行動だが、強くて前向きで、さっぱりとした性格が親しみやすい。
一方、信二のほうは優しくて頼もしいが、ちょっと反応が薄くないかと不満だったのだが…。再会後に分かった行動にはじんわりくるものがある。
再会後の不器用なやり取りや、見せ場もよかった。その後の展開も意外性があったし、全体に遊郭ものらしいシーン(…)が多いのに、筋立てがしっかりしているところがさすがだ。
暗い方向に向かっている時代だが、この二人なら大丈夫だろうと思える強さがあるのがいい。
佐々木禎子 | comments(0) | -

砂塵のかなた

佐々木 禎子
プランタン出版
(2006-09)

あらすじを斜め読んだとき、お代官様がご無体なさった後にハーレムに閉じ込められてから釈放される話かと思った。過去2冊しか読んでいないのにこういう書き方もどうかと思うが、アラブ王子が受を対等な仕事相手だと認めているアラブものってほとんどないはずなので。というより、受に人権が認められていることが少ないんじゃないかと思う。人権なんてものはBLアラブもの世界では砂漠に捨てられて風化している。統計を取ったことはないが、たぶん。
が、このお代官様はどうやら「仕事のできる男前受」がお好きらしい。おお、私と同じ趣味ですね、シーク!といきなり親近感を覚えた。そんなわけで、シークが多少おバカさんな行動をとっても暖かく見守ることができた。
どうでもいいことだが、攻がヒゲじゃないことにきちんと説明があるアラブものは珍しいのでは。そんなところにも好感を持った。
受の雪也は仕事ができる上に内面も男らしくて、とっても好みだった。少しばかり理不尽な状況ではあったものの、「言うことを聞かないとお前の会社とは取引しない」なんていう脅迫ではなく、自分で選び取った「取引」なのがいい。
お互いに惹かれた理由と過程が分かりやすいので、感情移入しやすかった。今まで読んだ2冊は、攻は単に「顔が綺麗で毛色が変わってるから」って理由で受を気に入ったとしか思えず(最後まで遊びとしか思えない)、受はただ流されるだけだった。一生ハーレムに軟禁されても構わないって人間に感情移入するのは無理で…。この作品ではちょっと特殊な設定なだけで、普通に恋愛小説として楽しめるぐらいだった。
そういえば、後半の展開が前に読んだ作品とまったく同じで、こんなそっくりでいいのか?と思ったが、その後の展開は真逆ぐらい違っていて面白かった。
王族としての権力が魅力の一部なんて男はつまらないと思うが、この作品では個人の魅力で勝負していたのがよかった。

きっと王道ではないのだろうが、選べば面白いのもあるんだなーとアラブものへの認識を改めた。
佐々木禎子 | comments(0) | -