Platanus’s Favourite

お気に入りだけ。「殿堂入り」BL作品の感想。
すべてネタバレ感想なので、ご注意ください。
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イノセンス―幼馴染み

砂原 糖子
幻冬舎コミックス
(2010-05-17)

これは2005/2にオークラから出た単行本の復刊。…アイス、ほんといいレーベルだったな。
砂原作品の「殿堂」を考えたときに、『優しいプライド』とこの作品がほぼ同時に思い浮かんだ。けど、この作品のほうは本が手元になかったし、なにより書くのが難しくて、「下書き」を残しただけでなかなか感想を書けずにいた。
ぐずぐずしているうちに文庫が出たので、この機会に勢いをつけて書いてしまおうかと。



なんで感想が難しいかというと、主人公の睦が特殊学級に行くほどではないけど、知能が遅れているから。
この説明だけでも、「差別的になっていないだろうか」、「表現として適切だろうか」、「偏見が入っていないだろうか」と考えてしまうので、長々感想を書くとなると難しい。あるいは「難しい」と云ってしまうことさえ、誰かを傷つけることになってしまうのではないかと心配になる。
そんなわけで、小説、しかもBLというラノベのジャンルで扱うのは相当難しいテーマだと思う。これを逃げずに、丁寧に、気を遣いつつ、真摯に書き上げた砂原先生はすごい。
もしかしたら、書き方に問題(差別的で不適切な表現、偏見等)もあるのかもしれないけど、上にも書いたように「この問題をBLで扱うのはどうか」と避ける考え方自体が差別に繋がることもあるので、まず書こうと思った姿勢だけでも評価されるところなんじゃないかと思う。
しかも決して、特別視するような書き方じゃなかったし、睦の目を通して差別っていうのがどういうものなのか分かりやすく書いている。これでダメっていうならこのテーマは不可侵、書くだけでタブーってことになりそうだと個人的には感じたが…。


…とても暖かくてBLとしても楽しい作品なんだけど、どうしても堅苦しい前置きが必要になってしまう。
読んでいて、やっぱりちょっと痛い場面もある。睦が「触らないで」と言われて、手を洗い続けるシーンとか、強烈で忘れがたい。でも来栖と、家族や友人の愛情が読者の気持ちまでしっかりフォローしてくれるし、辛いからこそ人の気持ちの暖かさにじんわりするというか。

睦は一途でいじらしいので、感情移入しやすいし、素直に応援したくなるキャラ。攻の来栖はちょっと不器用だけど、やっぱり優しくて…、睦から逃げてしまう。しかも再会まで8年間という思い切った(?)ブランクが空くのだが、来栖からの手紙も途絶え、連絡もない状態で、睦は来栖を追いかけて上京する。うーん、すごい一途だ。
じゃあ来栖がひどい人なのかというと、そうでもない。いつまでも子供みたいな睦と恋愛するのって、常に罪悪感がつきまとうものだろうと想像つくし。実際には同い年でも、大人が小中学生を好きになってしまうような感覚なんだろうと思う。せがまれてキスはしたけど…その先のことまで考えたら、18歳の来栖が逃げ出したくなるのも当然かもしれない。
最初に読んだとき、「何も分かっていなそうな睦に手を出していいものなのかどうか」というようなことを考えさせられた。…でも、相思相愛の相手が手を出しちゃいけないなら、睦は大人なのに誰ともセックスしちゃいけないって言うようなもので。だとしたら悩むところは同性同士だってことぐらいだろうし。(…BL読者にとっては考える必要のない問題)
と、来栖が再会後にすぐに思い切れるわけもなかったが、大事にしたいがゆえの葛藤がよかったし、ハードルを乗り越えてのハッピーエンドは感動的だった。
そして睦が来栖を「純粋」と表現するところに、この作品のよさがあると思った。睦の台詞に「確かにそうだなー」と頷けるところがいいというか。来栖の睦に対する言動は自分勝手だったんだけど、逃げてしまったことには共感できるし、来栖は来栖ですごく一途。睦のことを忘れたいと思いながらも、8年間大事に、睦にもらった「願い事をかなえる券」を持っていたなんて…やっぱり純粋な人なんだろうなあと。まあそのことだけじゃなく、睦に対する優しさを見ていてそう感じた。
睦も一緒にいて癒されるような純粋性を持っている。
当て馬として(?)来栖の婚約者が出てくるのだが、この女性は優しそうに見えて睦を馬鹿にしていたり、選挙に利用しようとしたりする。読者に嫌われるタイプのキャラ。でも睦は彼女のことを理解したうえで優しい人だと感じる場面がある。人の悪意を見抜けないとか、睦自身がお人好しキャラだからではなく、きちんと理由があり、暖かい目線で彼女を見た結果として優しい人だと思うところがよかった。…「障害があるゆえに、天使みたいに悪意がない」という描き方じゃない。彼はそれこそ幼稚園児のころから変らずに、「嫌いなものは思いつかない、だけど好きなものはいっぱい」という人で、ものの見方が優しいだけだと思う。そんな睦の優しさに癒される。
そしてそういう睦の優しさに一番救われてるのは来栖で……、そんな二人だから幸せになってほしいと思う。

砂原糖子 | comments(0) | -

優しいプライド

砂原 糖子
オークラ出版
(2002-01)

研修医×ホスト、中学の同級生の再会もの。

砂原さんのホストものは好きな作品が多いが、これが第一作目じゃないかな。
ひねくれた受と優しくてもっさりした感じの攻が私好み。
個人的な趣味の上での難点をいえば、このイラストかな。門地さんのイラストはわりと好きなのだが、受の志上が童顔に見えて、どうにも本文のイメージと合わないような…。線の細い美形という設定なんだけど、身長は170センチ台後半でちょっと吊り目っていう設定なんだけどなあ……。そうは見えない。

また志上というキャラの言動は結構子供っぽいところがあるので、このイラストを見ながら読んでいると、そういう外見上の設定を忘れがちで。うーん、ラノベはイラストとセットと言われると、そうかな?と思うことが多い私も、この作品に関してはイラストのイメージと本文のイメージをダブらせてしまう。

話はじっくり系。テンポもいいし、設定だって凝っているのだが、どちらかといえば腰を据えて読ませるような話じゃないかと。重苦しくなりすぎずに、重たいテーマを扱っていて、過不足がない。とにかく主人公の心情を丁寧に追っていて感情移入がしやすい。
志上はたぶんどちらかといえば読者に好かれないタイプじゃないだろうか。(受は優しく健気なタイプが好きって人のほうが多そうなので)
実際、性格がいいとは言いがたいのだが、私はこういうタイプのほうがかえって共感しやすくて好きなので、最初から楽しく読み始めた。志上が保高を嫌っている理由というのが、またよく分かるもので…。過去の「事件」は二回とも保高のやり方が無神経だったと思う。保高だって子供だったんだから仕方ないんだろうけど、中学生の人間関係って微妙なバランスで成り立っているのに、それはないだろうと。
だから最初は保高に魅力を感じなかった。いい人だけど、いい男じゃないっていうようなタイプだし。
けど、ふたりの同居が始まって保高の真っ直ぐな優しさが分かってくると、だんだん志上は早く保高への想いに気付くといいなあと思えてきて…でも保高には彼女がいるので自覚してしまうとかなり切ない。
自分でも気付かない恋心から、保高の彼女を寝取ってしまう志上だが、恋に気づくと今度は保高にバレないかと不安になる。勝手と言ってしまうこともできるけど、そういう行動に出てしまうのは志上が不器用で、孤独だから…。バレたほうが気持ちよくハッピーエンドになると分かっていても、このまま嘘をつき通せればいいのにと思ってしまい、ハラハラさせられた。
作中で二回も女性に「あなたの子供よ」と言われてしまう受。すげーな、と思っていたが、これが一度はうまくいった保高と別れる原因になり、さらに志上の背負っているものに繋がっていて、このへんは上手いなあと感心しつつ、引き込まれた。
誤解をされてもここで本当のことが話せないのが志上の魅力であり、ここで志上を殴って別れるのが保高の魅力だと思う。切ないけど、納得の展開というか。
保高と別れた志上は、他の男の子供を自分の子供だと言い張る奏恵に本当のことを話し、クズともまで言われるが、それでも彼女の幸せを本気で願う。話の最初のころは確かにクズと呼ばれても仕方のなかった志上が、ここまで変ったのは保高のおかげで…。読んでいて辛い場面ではあるけど、同時に少しだけ安心できる場面でもあった。
砂原作品の場合、性格の悪いキャラが出てきても、同情できるだけの背景があり、あとから必ず反省と改心のきっかけが出てくるのがいい。きっちり救いがある。
公園での再会は本当に感動的だった。
甘い続編がまたよかった。それぞれ不器用なふたりだけど、きっと上手くやっていくんだろうなあと思えた。

砂原糖子 | comments(0) | -

言ノ葉ノ花

砂原 糖子
新書館
(2007-09-10)

いくらでも話を派手にできそうな能力を設定しつつ、話は地味に丁寧に進むので、FT設定に抵抗のある人でも楽しめそう。
切なさ200%(※)…確かにそれぐらいかも。そんなわけで最初に読んだときは重苦しくて読みづらかったのだが、細部をすっかり忘れる程度に時間を置いて再読した今回は切なさに涙ぐみつつ、最後まで恋愛ものの醍醐味?キャラと一緒に悩んだりドキドキしたり…を楽しめた。
(※裏表紙のあらすじに書いてあった)
能力のことを告白してからは長谷部の態度が冷たく感じるのだが、後から言い分を聞けばもっともで、むしろなんで長谷部の気持ちを想像してみなかったのかと驚いてしまった。余村にどっぷり感情移入してたせいで、どうもそこまで余裕がなかったらしい。なんかすごいなあ。
で、続編は彼の最大の悩みだった能力が消えてしまい、最初は喜ぶものの、次第に人の心が読めないことが不安になり…という内容。まあこの作品の場合は、なんでこんな能力が備わってしまったのかというのはどうでもいいことなのだが、しかしそんなあっさりいかれると、ちょっと都合がよすぎないかと首を傾げてしまった。唐突に現れたものだから、ある日いきなり消えても不自然ではないのだが、なんだかねーと。
でも読み始めたら余村の不安に引き込まれていた。人の心が分からないのなんて、恋愛小説のキャラだけではなく、すべての人に共通の悩みだろうけど、余村のような事情があったらやっぱりこんな風に不安になりそうだと思う。現実ではありえない悩みをリアルにじっくりと描いていくので、感情移入もしやすいし、切なさも、その後の幸福感も大きい。
このまま終わってもいいと思っていたが、ラストはどうなるのかなという期待があったので、尻すぼみで終わらなかったのが嬉しい。
砂原さんは不器用真面目(たまにヘタレ)攻×気が強くてちょっとひねくれた繊細受が上手いなあと。
砂原糖子 | comments(0) | -

ヤクザとネバーランド

砂原 糖子
幻冬舎コミックス
(2007-05)

タイトルで迷ったが、砂原さん×ルチル文庫っていう組み合わせでは買わないわけにはいかなかった。
前作はかなり私の趣味から逸れてしまったが、その前の2作が感触よかったし、いま(2007/05)は文庫ならルチル、単行本なら大洋、漫画なら東京漫画社がお気に入りレーベルで、好きな作家さんがこの3つから出してれば、ほぼマスト買い。(ほぼってつけると、マストじゃないような?)

読む前にタイトルについて考えた。
ヤクザ…避けて通りたい題材。
でも、ヤクザをにおわせる「龍」とかそういう単語を使わず、直球。ここで外してるよね。ヤクザもの苦手な私にとっては、いい意味で。
しかもヤクザものとしてはかなり相容れない「ネバーランド」ときてるので、これはもう「可愛い受を拉致監禁して無理やり女にして、ついでに墨をいれてみました。だって好きなんだもーん」って話ではないだろうと思い(そういうのが個人的に好みじゃないというだけで、否定はしてません)、そうなるとどんなヤクザものなのよ?っていう興味を引かれ…。


あとがきを読んで、嬉しくなった。
私もヤクザとアラブ王子は受にしたいです。専門用語?を使えば、下克上好きなので。
やっぱりヤクザものなら受は姐さんじゃなくて、組長よね。と常々思っていた。嬉しい。
というわけで、とっても趣味に合った作品だった。なにげに年下攻だし。(1歳差だが)
ヤクザものが好きな人からすると、ちょっと肩透かしなヤクザものかもしれないが、リーマンから組長への転職って新しくて楽しいと思う。
受は文句なく好みな男前で強気タイプだし、攻も不器用で面白かった。
攻の名前は私のさび付いた脳ではどうにも読み方を覚えられず(発音しにくい名前って覚えづらい)、何度も最初のルビを見直すことになったが、受が服を脱いだときにだけ時々平仮名で名前を読んで…じゃなくて、呼んでくれるので、ありがたかった。いや、ほんとに…。

まあそんなことはともかく、話としても感情移入しやすく、面白く読めた。話としては規模が小さいのだが、ヤクザものらしいテイストもしっかりありつつ、基本は肩の力が抜けてていい。
しっかり最後まで楽しませてもらった。
砂原糖子 | comments(0) | -

真夜中に降る光

砂原 糖子
幻冬舎コミックス
(2006-05-16)

ひねくれたキャラが好きなので、最初から最後まで楽しめた。
早く素直になればいいのに〜と、ものすごくじれったいところがいい。
津久井も最初はあまりにいい人過ぎて受け付けないものを感じたが、だんだんそれが快感になってくるから不思議だ(笑)
…金崎の最低振りは最初から受け付けたんだけど。
なにか自分の趣味に疑問を感じるなあ。といっても、別に金崎のしている悪いことを肯定しているわけでもなくて、金崎が最後まで自分のしてきたことのツケを払わずに、ただ津久井に癒されるような話だったら、金崎というキャラに何の魅力も感じないと思う。
ただ、金崎が本当にどうしようもないことばかりしている話の冒頭あたりから、すでにこのキャラに魅力を感じさせてしまうあたり、やっぱりこの作者さん好きだなあと、しみじみ。

あー、でも耳以外のピアスは受け付けないので、外してくれてよかった。注射も怖い人間なんで、ピアスって痛そうで、見てるだけでも(読んでるだけでも)怖い。とくにあのリングになってるやつが、すごくダメ。引っ張ると痛そうでどうにも。
津久井の株が急上昇したのは、ピアスを外してくれたときだったかも(笑)

砂原糖子 | comments(0) | -

シンプル・イメージ

砂原 糖子
幻冬舎コミックス
(2008-03-17)

カッコよく可愛い年下攻で、クールでちょっと無気力になっている受。ものすごく好みの設定なのだが過去2回読んだときは、攻の永倉が高校生なので(好みから外れるので)そんなにインパクトがなかった。でも、いいなあ、これ。地味じゃないけど、落ち着いた雰囲気だから読みやすい。
主人公の浅名はクールでカッコよく見えるのに、意地っ張りで可愛いところがあって共感しやすい。永倉が高校生なのを気にしてしまうのもよく分かる。いくら大人っぽいタイプでも、実年齢を気にするなっていうほうがムリだよなあ。ましてや将来のことなんて考えたら…。
で、それを乗り越えてくれるところがいいなあと。大変なことはあるけど、きっと大丈夫だよって言ってくれる永倉の優しさがよかった。
派手な展開はないけど、しっとりと丁寧に恋愛が描写され、読後感もさわやか。ほんと、これからも二人で幸せに過ごしていくんだろうなあと自然に思えるカップルだった。
砂原糖子 | comments(0) | -